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大阪地方裁判所 昭和23年(ワ)397号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事實)

原告は昭和二十三年二月二十七日午後七時半頃大阪市内所在被告経営の浴場で入浴中、同浴場番台前の無錠補助番箱に入れておいた衣類携帶品時価二万七千二百十円相当及び現金三千百七十二円を何者かに窃取された。被告は予て盜難防止のため脱衣箱の錠を整備するよう努力し本番箱三十六個については既に施錠を完成していたが補助番箱十五箱については資材不足等のために未完成であつたので当時脱〓場内には「盜難に注意」、「錠のない脱〓箱は使用しないでくれ」との貼紙を出し、事件発生当夜には番台一名向番二名を配して男女湯の看視に当らせていたが、原告は入浴前右衣類等を特に被告に寄託することも施錠できる本番箱に入れることもしなかつたものである。

原告は浴場経営者としての被告に対し、まず商法上の債務不履行による三万三百八十二円の損害賠償を求め、現金のみについては予備的に業務上過失にもとずく不法行為上の損害賠償を求める。

(判斷)

原告一部勝訴。

裁判所はまず、被告に商法第五百九十四条第一項の賠償責任があるという原告の主張を事実の証明がないものとして排斥した後、被告経営浴場の盜難防止の設備ないし人員の配置について被告に責むべき点があるとはいえないけれども、本件盜難防止のため監視人等に不行届の点があつた以上、被告は商法第五百九十四条第二項の規定による責任を負わねばならないとした。すなわち、

判示事項一「浴場等客の來集を目的とする場屋の経営者に対して法律が要請するところは唯に施設の整備というだけではなく、要は之等施設を活用して事故の発生防止に努めしめるに在る。今本件について右監視人等が果してよく其の任を果していたかどうかを考察するに、……本件盜難発生当時の男湯入浴客は二十名内外であつたと謂うのであるから施錠完全な本番箱には猶相当の余裕があつたことが認められるのであつて、そのことは監視人は勿論十分知つていなければならぬ筈である。従つてかかる際監視人としては仮令前に認定の如く「錠のない脱衣箱を使用するな」との貼紙が出してあつたにしても、原告がその携帶物品を補助番箱に入れようとするを認めたならば、当然本番箱に入れる樣促すべきが至当であるにかかわらず、かかる挙に出でた何等の形跡もない。のみならず番台及び向番が番台直前にある第五番脱衣箱から別紙目録記載のような多量の物品が窃取せられるのを発見出來なかつたということは如何にしても監視人等がその任を盡したものとは言い難い。」

裁判所は更に進んで現金については原告から種類数額を明告して被告に寄託した旨の主張がない以上商法第五百九十五条によつて被告に商法上の債務不履行による損害賠償責任はなく、被告は普通人としての注意義務を怠つたのでもないから不法行為による損害賠償責任もないと断するのであるが、現金以外の被害による損害賠償につき過失相殺を論じて次のとおり判示した。

判示事項二、現金を除く被害物件の価格は金二万七千二百十円でこれが原告の蒙つた損害である。「然し当時の如き盜難頻発の社会情勢の下に於ては、浴場内に於ける盜難防止の完璧を期するには単に浴場側の努力に待つのみではなく、入浴客も亦之に協力することが必要である。本件に於ては……被告経営の浴場には当時本番箱三十六箱に錠が設備され、又貼紙による注意も掲げられていたのであつて、且つ当夜施錠完全なる本番箱には猶余裕があつたにもかかわらず原告は漫然錠のない補助番箱に衣類及び携帶金品を入れて入浴し、然も入浴に際し相当高価なる背広等を着用して行つた為盜難を誘発し且つ損害を普通以上に拡大したものと謂うことが出来るのであつて、この点に於て原告にも過失があるから、当裁判所は損害賠償の額を定めるにつき、この点を斟酌勘案し、被告の賠償すべき額を金八千円とするを以て相当と認める。」と。

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